物心ついた時から既に私の人生において、鉄道は欠かせない存在になっていまして、それもいつしか四十数年経ったわけですが、外国の鉄道だけは全くと言っていいほど、興味がありませんでした。だから 「世界の車窓から」 は殆ど観た記憶はありませんし、1988年にヨーロッパから 「オリエント急行」 が “来日” しても 「ふ~ん、だから?」 的に素っ気ない感想で、見に行こうとは1ミリも思いませんでした。
そんな私ですが、過去に3列車だけ、些かではありますが興味を示したことがあります。
① フランスの特急 「ミストラル」 号。
② ドイツの特急 「ラインゴルド」 号。
③ フランス新幹線 「TGV」
今回は、そのTGVのお話しでありますが、あくまでも “TGVが好き” という意味での興味ではなく、日本の新幹線の仇役としての興味であることを付記しておきます。
私がTGV (Train a Grande Vitesse=フランス語で 「高速列車」 の意味) の存在を知ったのは、 「鉄道ファン」 誌の1981年9月号の記事からでした。
新幹線といい、リニアモーターカーといい、鉄道におけるスピードレコードホルダーは日本の専売特許であるという誇りみたいなのが子供心に根付いていました。しかし、1981年2月26日、フランス国鉄 S.N.C.F.がパリ-リヨン間に建設した新線用に投入する車両が当時の鉄道スピード記録を上回る380km/hを叩き出して、大きなニュースになりました。因みに1981年当時の鉄道スピード記録はやはりフランス国鉄の電気機関車 (BB9000形) が叩き出した331km/hだったのですが、それを大きく上回る数字となったのも話題作りに一役買ったことになります。因みに日本の新幹線は、1996年にJR東海の試験電車955形 (300X) が記録した443km/hが今のところの最速記録として残されていますが、TGVが世間を騒がせていた頃は、1979年に961形電車が319km/hが最高記録でした。
この記事を読んだ時、実際には違うものの、子供心に 「新幹線の記録が破られた」 と大きな悲しみが私を襲いました。試験走行ですら、新幹線はスピード世界記録を樹立していないのに、今になって思えば何でそんなことで嘆き悲しんだのかは解らないのですが、 「日本の新幹線は世界最速だ」 と信じて疑わなかったので、余計にそう感じたのかもしれません。
「新幹線=世界最速」 というのは営業運転でのことで、210km/hでの営業運転は当時としては世界最速でした。TGVの営業運転にあたっては、それを上回る260km/hだったことから、その事を指して言ったんでしょうね、きっと。
さて、そのTGV、ブレイク (?) したのはそのスピード世界記録を樹立した1981年以降ですが、実際に構想が生まれたのは1960年代と言われていますので、日本の新幹線とそんなに誤差はないんですね。とううことは、昔の子供向け鉄道本など、一部媒体で表記されていた 「日本の新幹線の影響を受けた」 という件りはウソっちゅうことになります。
当初は磁気浮上式も検討されたようですが、最終的には軌道 (線路) と車輪を使っての一般的な粘着運転方式で研究が進められました。
最初の試作車両は、ガスタービンエンジンの出力回転軸を発電機に接続して電力に変換して、車軸に接続したモーターを駆動する電気式ガスタービン方式を採用しました。時に1972年のこと。同年12月にこの車両を使って試験を行い、当時の非電化用車両としては世界最速の318km/hを記録しました。S.N.C.F.も 「これでいけるんちゃいますか?」 と意気揚々に実用化に向けてさらに研究を進めたその矢先、オイルショックが発生。これによって燃料が急激に高騰して、研究を断念せざるを得なくなりました。
この事から、当初の計画は白紙同然となり、架線を使った電車線方式に改められて再度、研究が進められた結果、1974年に電車のTGV試作車両が完成しました。ほぼ同時期に最初のTGV路線であるパリ-リヨン間の 「LGV南東線」 の建設も始まりました。
電車というけど、両端に動力車、中間は付随車という構成で、機関車が客車をプッシュプルで動かすようなシステムとなっています。だから、厳密に言うと機関車+客車ではないかと思うのですが、後年、日本でもJR東日本の215系とか、JR貨物のM250系 (スーパーレールカーゴ) が同様の方式を採っています。
1981年9月27日、 「LGV南東線」 が開業し、当時の営業用電車としては世界最速である260km/hでの運転となりまして、それも世界からの注目を集めた一因でもありました。営業運転開始当初は画像のようなオレンジ色で、後にカラーも変更されていましたが、当時小学生とか中学生の私にしてみればまさに 「オレンジ色の憎い奴」 に映ったようです。
日本でも 「TGVブーム」 が沸き起こり、関水金属 (カトー) がNゲージで鉄道模型化しましたが、当時は単に 「TGV」 と明記して、形式とかは無かったように思います。今は23000形 (増備車は33000形) と呼ばれているようで、その辺りは日本の新幹線に似ていますね (初代新幹線も当初は形式が付与されて無く、単に 「新幹線電車」 と言われていた。後に0系と形式が与えられるようになった) 。
一方、画像左の白い電車は、ドイツのICEでしょうか? 「外国の鉄道に疎い」 という典型例で、何なのかすら判っていないのが正直なところ。
この車両は、 「ICE V」 と呼ばれる車両のようで、1988年5月にTGVを上回る406.9km/hのスピード世界記録を樹立。画像は、そのタイトルホルダーが並んだ様子でありますが、線路が繋がっているヨーロッパでは、割りと普通の光景なのかもしれませんね。
おそらく、当ブログで外国の鉄道を取り上げるのは、今回が最初で最後になる公算が大きいです。それはやっぱり 「興味が無いから」 に尽きるわけですが、乗ると 「格好いい」 になるんでしょうね、きっと・・・。
【画像提供】
岩堀春夫先生
【参考文献】
鉄道ファン No.245 (1981年9月号) (交友社 刊)
ウィキペディア ( 「TGV」 「LGV南東線」 )