JTBパブリッシング社から発行されている 「キャンブックス」 シリーズは、弊愚ブログの 「嗚呼・・国鉄時代」 などの参考文献として使わせていただいている有り難い資料なんですが、このシリーズに 「111・113系物語」 というのがあります。この中で興味深い記事がありましたので、引用させていただきたいと思います。同書をお持ちの方は94ページ 「113系1000’番台と1500番台の空気笛取付位置」です。
クハ111の空気笛 (タイフォン) は、1000’番台が下部に、1500番台は他のグループ同様、上部に設けられている。(中略)クハ111形1000’番台は従来の空気笛取り付け位置にATC関連機器 (直列抵抗器) が設けられ、空気笛が下部に移設されていることが判る。その後誕生したグループは本文に記したように、設計標準化の意味で空気笛は上部に移設され、0’番台 (増備された新製冷房車) はクハ115形300番台同様、上部に設けられているのが判る (勿論、このグループには直列抵抗器はない) 。2000、2700番台の機器類も0’番台と同様なのに対し、1500番台は直列抵抗器を1000’番台に比較して低い位置に取り付け、空気笛が上部に設けられている。一部の文献では、1500番台の前灯・空気笛は2000番台と比較して高い位置に取り付けられていたと記されている。残された写真を見ると、確かにそのように見えなくもないし、ぎ装上の都合で前灯・空気笛取り付け位置を高い位置に取り付けて製作された (あるいは改造された) かもしれないが、2000番台と1500番台の形式図では、前灯は同一位置に記載されている。筆者としては、形式図を優先するとの考えのもとに、1500番台の前灯取り付け位置は2000番台と同一のレール面上2100mmとしておきたい。
この文面からでもお解りかと思いますが、この著者氏は 「113系1500番台と2000番台の前灯・空気笛取り付け位置は同一である」 という認識を示しています。
では、実際に実物写真を見て比較してみましょう。画像上が1500番台で、画像下が2000番台もしくは0’番台です。一目瞭然じゃないでしょうか。例えば、1500番台の場合は、運転台窓下にある手すりギリギリにヘッドライトとタイフォンが設置されているのに対し、0’番台もしくは2000番台はその手すりより些か離れた位置に取り付けられています。さらに、貫通扉の取っ手で比較すると、0’番台もしくは2000番台が若干段違いになって取り付けられているのに対し、1500番台はほぼ水平に取り付けられています。クハ111の貫通扉の取っ手はどの番台でも同一位置でしょうから、これだけでも違いがはっきりとしています。これでも、 「レール面2100mm」 という説になるのでしょうか。私に言わせれば、 「遠山の金さん」 の桜吹雪じゃありませんが、 「これでもまだ、1500番台と2000番台 (もしくは0’番台) と同じだと言い張るのかいっ!?」 という気持ちです。
著者氏は 「形式図優先」 としていますが、一般論からすれば、 「実物優先」 なのでは? と考えます。
私もクハ111形1500番台の形式図を拝見しましたけど、実物と比較しても、形式図の方が明らかにおかしいんです。1500番台と2000番台は先頭車を除けば基本的には一緒ですから、その形式図って、2000番台のを流用したものではないんですか?
あるいは設計段階では、レール面2100mmとする予定だったのが、ATC関連機器の関係で、 「あっ!忘れた」 的に、製造の段階で前灯とタイフォンの位置を高くしたと考えるのはどうでしょう?
また、著者氏は 「ぎ装上の都合で前灯・空気笛取り付け位置を高い位置に取り付けて製作された (あるいは改造された) ・・・」 と記していますが、クハ111形1500番台は新製当初からヘッドライトとタイフォンの位置はあのままですよ。因みに同時期にリリースされたNゲージの113系1500番台が形式図通りに模型化されたのは何とも言えず、皮肉な話ですけどね。
私は何故か、113系1500番台が殊の外、お気に入りで、大量にある1000番台の中に時折、お目にかかるクハ111の1500番台を見ると、無性に喜んだという記憶があります。Nゲージでも長年、ヘッドライトとタイフォンの位置が実車と異なっていただけに、何年か前にリリースされたトミックスのリニューアル製品でようやくクハ111のヘッドライトとタイフォンの取り付け位置 (意匠) が実物に沿った形となって喜びました。
もう一度、敢えて申しますれば、
クハ111形1500番台の前灯・空気笛取り付け位置はと2000番台 (0’番台) と比べても、明らか高い位置に取り付けられている。
と断言して差し支えないと考えます。