2016年、はとバスに納入以来、東京ヤサカ観光バス、京成バス、ジャムジャムエクスプレス、そしてJRバス関東と、首都圏の事業者のみながら着々と台数を増やしているバンホール/スカニア・アストロメガ。信頼性が確立されれば、更なる採用事業者が増えるとは思いますが、毎度申し上げるように、この勢いが国産二階建てバス復権への布石になれば良いなと思っている昨今ではありますが、画像はアストロメガの初代モデルになります。
日本に二階建てバスブームがやって来たのは1982年辺り。
西ドイツのバスコーチビルダ-であるアウベルダーが 「ネオプラン」 というブランドで二階建てバスを輸入したのがきっかけでした。
日本車に無い洗練されたスタイルもさることながら、ダイムラーながらベンツエンジンを搭載していたことが人気に拍車をかける一翼となり、各バス事業者は、こぞって自社のフラッグシップにと、ネオプランの二階建てバスを導入することになります。そうすると、アウベルダー以外の欧州バスコーチビルダーは、 「日本に需要の兆しあり」 と売り込みに躍起になります。例えばいすゞ自動車と伊藤忠商事を介してやって来たのがドレクメーラー社で、いすゞをメインに導入している事業者に 「メテオール」 というモデルをセールスします。そしてバンホールは三井物産と岐阜の華陽自動車興業が介入して売り込みをかけました。華陽自動車興業は名鉄グループの企業で、自社も華陽観光バスという貸切事業を手がけていました。
バンホールの二階建てバスは 「アストロメガ」 といい、市販1号車は華陽自動車の親会社でもある岐阜乗合自動車 (岐阜バス) に収められました。既に岐阜バスでは、豪華な観光バスが数多在籍していましたが、アストロメガをベースにした 「インペリアル・サルーン」 はその上をいく存在となりました。
前述のように現在のアストロメガは、今のところ、首都圏の事業者を中心に導入されていますが、初代のアストロメガは、名鉄グループを始めとする中京圏の事業者に多く導入例が見られました。また、二階建てアストロメガの他に、スーパーハイデッカーの 「アクロン」 や、ボルボ・アステローペのような後部のみを二階建て仕様にした 「アストロン」 など、バリエーションも多く点在し、名前はありませんが、路線バスも導入されました。
現行モデルのアストロメガは、スカニア製のシャシーとエンジンを用いていますが、初代モデルは自社のシャシーで、エンジンはダイムラー製でした。因みに、ダイムラーエンジンはネオプランやバンホールだけでなく、ドレクメーラーやケスボーラ社製のバスも搭載していました。同年代のF1エンジンであるコスワース・DFVの如く、信頼性があるのか、選択肢が無いのかは定かではないのですが、もしかしたらこの事がダイムラーを天狗にさせて、真新しいエンジンの開発を怠らせてしてしまったのではないかと思ったりします。後年、炎上事件を起こして信頼を失くしたネオプラン・メガライナーのエンジンも、元々のベースになっているのはダイムラーの旧式エンジンでしたからね。
しかし、そうは言っても、日本国内における輸入二階建てバスのシェアは、アウベルダー (ネオプラン) のほぼほぼ一人勝ちで、バンホールもドレクメーラーもごく限られた事業者にのみ導入されたにとどまり、ネオプランの牙城を崩すことは出来ませんでした。後に参入したMANやヴォーヴァはその姿すら滅多に見かけないほどの台数で、一矢報いたのは、富士重工とのコラボながら、ミッドシップシャシーと後部二階建てが鮮烈なフォルムを印象づけたボルボ・アステローペぐらいじゃなかったかと。
私も、緑ナンバーを付けた初代アストロメガを見たのは多分、一度もありません。唯一、自家用ナンバーのアストロメガを東京駅で見かけただけでした。バンホール自体、殆どお目にかかったことは無く、スーパーハイデッカーの 「アクロン (T815) 」 が唯一じゃないかと。その後、21世紀に入ってはとバスに導入された “二代目” のアストロメガ (※) を見たり撮ったりしましたけど、この “二代目” の導入例って、はとバスの他にあるのでしょうか?
所有事業者:名古屋観光自動車 (愛知)
仕様・用途:観光貸切仕様
愛称:THE WORLD
登録番号:名古屋22 か 3828
シャシーメーカー:バンホール社 (ベルギー)
搭載エンジン:ダイムラーベンツOM422A型
車体架装:バンホール社 (ベルギー)
車両型式:TD824
車名:バンホール・アストロメガ
※・・1997年に再輸入されてはとバスに導入された個体を “二代目” としましたが、型番はTD824のまま変更が無く、本来であれば初代のマイナーチェンジと捉えるのが筋かとは思うのですが、エンジンはMAN社製ですし、弊愚ブログではゴリ押しながら敢えて “二代目” とさせていただきます。
【画像提供】
ウ様
【参考文献・引用】
バスラマインターナショナル No.151、154
BUSRAMA EXPRESS No.11 「The King -エアロキングの四半世紀-」
(いずれもぽると出版社 刊)
ウィキペディア (バンホール)