越谷レイクタウンで行われているノスタルジックカーの展示車紹介、その第二弾です。
今はトラックやバスなどの商用車を中心としたラインナップを形成しているいすゞ自動車ですが、昭和の時代は、いすゞも乗用車を生産していました。長いいすゞの乗用車の歴史の中で、今でも 「最高のスポーツカー」 として名高い、ベレットです。後に登場した117クーペをスポーツカーと呼ぶか否かはそれぞれの判断に委ねますが、個人的にはライトウェイスポーツカーの元祖と言っても過言ではないのではと思ったりします。ただ、同時期に登場したトヨタスポーツ800やホンダS500よりも排気量が大きいので、ベレットをライトウェイスポーツカーと呼んで良いのかどうかというのもありますけどね。
日本の乗用車において、スポーツモデルの代名詞的グレード名に 「GT (Gran Turismo または Grand Turing) 」 というのがありますが、ベレットは日本で最初に 「GT」 のグレード名を冠したモデルとして知られています。また、スポーツカーらしく、日本で最初にブレーキにディスクブレーキを用いたのもベレットです。さらに今では至極当たり前である四輪独立懸架サスペンションも早くから採用し、ステアリング・ギアボックスには当時の日本車では珍しいラック・アンド・ピニオン方式が採用されています。
元々、ベレットはスポーツカー志向ではなくて、ファミリーカー志向でした。
いすゞ初の乗用車であるヒルマンミンクスの後継車として1963年から生産が開始されましたが、当初は1500ccのOHVと1800ccディーゼルの2タイプがラインナップされ、2ドアと4ドアのセダンが設定されていました。その翌年には1300ccOHVも加わっています。
ベレットがスポーツ志向になったのは1964年からで、1500ccエンジンをベースにした1,600ccOHVエンジンを新規に製作して、車高もセダンと比べて40mmほど下げられました。このホットなモデルに 「GT」 のグレード名を与えたのですが、前述のように、これが日本初の 「GT」 の名を冠した車になりました。 「GT」 というと、日産 (当時はプリンス自動車) のスカイラインがその代表格ですが、発売こそスカイラインの方が早かったのですが、発表はベレットの方が先でした。 「発表」 と 「発売」 ・・、 「鶏が先か卵が先か」 的な論争なんですけど、自動車の世界では 「発売」 よりも 「発表」 の方が先なんですね。 「ベレットGT」 、略して 「ベレG」 なんて呼ばれ方もしました。私もついつい 「あっ、ベレGだ」 って言ってしまいますね。
長らくOHVエンジンを搭載していたベレットですが、1969年、ついにGTにシングルキャブながらOHCエンジンが搭載されます。これによって、従来のOHV搭載のGTは生産中止になります。同時にDOHCエンジンを搭載した、ベレット史上最強のモデル、 「GT-R」 が登場します。世間では 「GT-R」 あるいは 「GTR」 と呼ばれることが多いですが、正式には 「GT type R」 だったりします。画像のモデルも 「GT type R」 です。このDOHCエンジンは117クーペのエンジンをそのまま換装し、サスペンションは前後輪共に強化スプリングとして、ブレーキにサーボを追加しました。
何かと初物づくしだったジェミニは、1973年に生産が中止され、後継のベレット・ジェミニにバトンを渡しています。これが後のジェミニになります。ジェミニにもベレットのDNAが受け継がれ、特に3代目ジェミニの 「イルムシャーR」 にはベレット時代のオマージュである 「Type R」 のエンブレムが取り付けられました。
画像のモデルはボディカラーが白ですが、 「ベレG」 はオレンジ (ボンネット部分だけ黒) が一番よく似合っているなって思います。