私の大好きな電気機関車にEF64の1000番代があります。EF67、ED79と、 「国鉄最後の・・」 を形容する電気機関車は数多ありますが、EF67もED79も改造車なので、純然たる新形機関車ではありません。つまり、EF64 1000こそ、 “国鉄最後の” の形容がピタリとハマる機関車だったりします。
メカニズム的なものはEF64をベースにしているから、番代区分という名の “法の抜け穴” で逃げ切った国鉄。でも、実際には、単にベースにしているだけの話で、中身はEF64とは全くの別物だったりするから、本来は別形式を名乗ってもおかしくない機関車でした。でも、当時の国鉄は文字通り、国の機関。会計監査のツッコミを逃れるために、既存の形式の “増備車両” ということにしたんですよね。新形式にすると、予算云々で会計監査からあれこれ言われたんでしょうね、きっと。
この事は以前にも弊愚ブログでもお伝えしていますが、同じケースとして、183系1000番代、115系1000番代、485系1000番代もその対象になっていたそうです。
そうは言っても、やはりEF64 1000番代の洗練されたスタイルは、見る者をウットリさせました。イケメンでマッチョな肉体・・・、敢えて芸能人に準えると、やはり、ケイン・コスギでしょうか。
EF64 1000番代の登場は、国鉄としては、あまり考えるに至らなかったことの方が多勢を占めていたのですが、EF15やEF16の老朽化が顕著なものになり、代替の機関車を考えるにあたって、当初はサイリスタ・チョッパ制御や電力回生ブレーキなどの新機軸を盛り込んだ次世代仕様にしたいという思惑が国鉄技術陣にはありました。しかし、抑速ブレーキ力の定量性及び昭和55年10月のダイヤ改正に間に合わせるという “短期決戦” だったこともあって、発電ブレーキ付き抵抗制御のEF64を投入することで一応の決着を見ます。しかし、EF64の設計自体が古くなっていることと、投入線区の実状 (奥羽本線) に合わせた仕様で設計されたため、検修作業性、乗務員の居住性等、社会情勢の変化による、大がかりな改善が求められていたので、性能を上越線向けにしつつ、それでいてEF64 (0番代) の良いところは良いところとして採り入れたのが1000番代ということになります。
ベースになっているのがEF64 0番代ですから、当然ではありますが互換性はあり、0番代との重連総括制御対応になっています。
奥羽本線も中央本線も、そして上越線も勾配区間が連続する山岳路線ですが、この3線を比較した場合、上越線の方が些かではありますが、勾配は緩いものになっています。この線区に見合う牽引定数の向上が求められますが、加えて、抑速ブレーキの速度の向上も要請されますので、それに対応した設計になっています。そして、上越線は全国屈指の豪雪地帯ですので、耐寒耐雪装備は万全です。
補助電源装置、補助回転機の無整流子化及び、列車暖房用の電動発電機を静止インバータにするなどの設計変更を行い、保守の簡略化と故障防止対策の推進を行っています。
登場当初はまだ、10系を始めとする一般客車がまだ残されていたため、暖房供給装置を備える必要があります。EF64 1000番代には電気暖房 (EG) が備わっています。
メカニズムは前述のように、EF64 0番代をベースにしながらも、随所に “最新” を採り入れています。
主電動機こそ、EF64 0番代と同じMT52型 (MT52B) を搭載し、抵抗制御器、転換バーニア制御器も0番代と同じものを採用しました。主抵抗器用の送付機は、スペースの関係で許容出来る範囲で低騒音型のファンを搭載しています。送風用電動機や空気圧縮機用の電動機は、保守作業の簡略化のために、全て3相誘導電動機となっています。これは、EF66 (22号機以降) やEF81と同じものです。
ブラシレス電動発電機 (DM104) や列車暖房用インバータの採用で、主抵抗器の容積が小さくなったにもかかわらず、電気機器の全容積が大きくなって、その分、車体長が伸びました。0番代が17.1mだったのに対し、1000番代はEF81とほぼほぼ同じ17.8mとなり、車体幅も0番代の2.8mから2.9mへと拡大されています。
パンタグラフも0番代のPS17から、下枠交差型のPS22Bに変わり、これは当時としては、EF65PF形に次ぐ採用例となっています。
1次車は1001~1016号機で、1017号機以降の増備機から、夜間運転用の連結作業灯 (ジャンパ連結器照明灯) が新たに設置されました (1次車も後々取り付け) 。また、パンタグラフがPS22Cに変更されています。
1次車は全機、長岡運転所に配置されて、EF58やEF16を置き換えました。上越国境越えもEF64がその任にあたるようになり、二次量産機 (1017~1032号機) が登場すると、次第に高崎第二や八王子などの機関区へ転属となり、EF15、EF58、ED16などを置き換えました。
画像の1001号機は、国鉄末期に茶色に塗られた後、平成29年に青+クリームの国鉄直流電機標準塗色へ変更されて話題をさらっていますが、この画像は、説明するまでもなく国鉄時代のもの。その証しに、夜間作業灯が無いでしょう。
EF65やEF66といった、国鉄時代に製造された機関車が風前の灯火状態になっている昨今、EF64 1000番代には末永い活躍を祈らずにはいられません・・・。
【画像提供】
タ様
【参考文献・引用】
鉄道ファン No.234 (交友社 刊)
鉄道ピクトリアル No.815 (電気車研究会社 刊)