向日町運転所 (大ムコ~現在のJR西日本吹田総合車両所京都支所) に佇む “関西ブルトレ三羽ガラス” です。
関西に旅行に行き、大阪から京都、あるいは京都から大阪に向かう際、よほどのことが無い限り、JRの新快速を利用するのですが、その途中、桂川あるいは長岡京を過ぎると、広大な車窓が展開されます。あれが昔の向日町運転所、今の吹田総合車両所京都支所なわけですが、基地に佇むのは京都を中心としたエリアで活躍する電車ばかりで、昔日の面影はありません。国鉄時代の向日町を知らないので (行ったことがないので) 、何とも言えないのですが、きっと凄かったんだろうなって。
2015年現在、客車の配置は無く、 「サンダーバード」 用の681系と683系、 「はまかぜ」 用のキハ189系、山陰本線 (嵯峨野線) 用の221系、湖西線用の113系など、電車や気動車の配置が目立ちます。しかし、国鉄時代は電車、気動車、客車問わず、特急や急行といった優等列車用の車両しか配置しない名門の車両基地でした。設立は昭和36年で、全国特急網を確立すべく登場したキハ82系を配置させる目的で設置したのが最初です。昭和39年の東海道新幹線開業に伴って、全廃される151系を受け入れたのも向日町でした。同年、481系 (→485系) も配置されて、以来、平成23年まで連綿と配置され続けていた、485系にとっては由緒ある車両基地でもあります。
ブルートレイン用の客車を初めて配置したのは昭和40年から。当然ですが、20系客車がその嚆矢になります。その後14系、24系24形、24系25形と関西ブルトレが増発される度に車両も増えていきました。
昭和50年3月に山陽新幹線が博多まで開業すると、今度は山陽本線の昼行特急が全廃されるのを機に、それまで南福岡に配属されていた581・583系が向日町に転属してきます。この頃が向日町の全盛期だったのかもしれないですね。ただ、向日町に顔を見せる車両のバラエティだけを見たら、やはり山陽新幹線開業前の昭和47年前後が一番の賑わいだったのかなって気がしないでもありません。
大阪駅 (含、新大阪駅) の至近には、宮原運転所 (大ミハ~現在のJR西日本網干総合車両所宮原支所) があり、向日町同様、優等列車用の車両を数多く配置していた名門車両基地がありますが、向日町に比べると手狭であるのは否めないので、大阪や新大阪発着の列車の一部は宮原経由で向日町まで回送することがありました。首都圏で言うところの尾久と東大宮の関係にも相通じるものがあります。尾久の場合は基本的には客車専門の車両基地ですので、電車の運行前点検を行う施設や人間がいませんでした。そこで、上野発着の電車列車は、東大宮操車場 (現在のJR東日本大宮総合車両センター) まで回送していました。
あらためて画像を見ると、 “三車両三様” 、あるいは “三列車三様” となるのですが、テールマークが文字マークです。また、 「あかつき」 は14系15形ですので、撮影時期でいうと昭和53年10月から昭和54年7月の間に撮影したことになります ( 「あかつき」 の14系15形化は昭和53年10月改正から、ブルートレインのイラストテールマークは昭和54年7月から) 。この時、14系15形はブルートレイン用客車としては最新鋭になり、九州の早岐客貨車区 (門ハイ) に配置されていました。 「あかつき」 用の車両で、つまりは西日本でしか見られない車両だったんですね。画像には写っていませんが、24系24形の新製配置は向日町だったんですが、50.3改正で品川客車区 (南シナ) に転属して 「はやぶさ」 「富士」 「出雲」 の20系を置き換えました。しかし、僅か1年でこの3列車は24系25形に置き換えられて、24形は今度は青森運転所 (盛アオ~現在のJR東日本青森車両センター) に転属、 「ゆうづる」 「日本海」 に投入されました。よって、久々に24形は来阪することになるのですが、この結果、大阪駅や新大阪駅には20系、14系14形、同15形、24系24形、同25形、581系、583系と、国鉄の寝台特急車両が全て見られたのです。しかも24系25形は、東京では見られなかった前期形の0番台もありましたので、この揃い踏みは東京駅でも上野駅でも真似が出来ない快挙と言えるでしょう (東京地区では583系はやって来ても、581系は営業列車では来たことが無い) 。
時代が前後しますが、熊本・鹿児島系統の 「明星」 が7往復 (581・583系使用列車を含む) 、日豊線系統の 「彗星」 が5往復 (同) 、長崎系統の 「あかつき」 が7往復と、列車のバラエティこそ少ないものの、これだけの列車が大阪駅や新大阪駅を発着していました。53.10改正までは呉線経由の山陽特急 「安芸」 もありましたしね。そして使用車両の多さも特筆すべきことで、これも時代が前後しますが50.3改正以降に特化すると 「あかつき」 が14系14形、同15形、24系25形、 「明星」 が14系14形、24系25形、583系 (581系含む) 、 「彗星」 が24系25形、583系 (581系含む) と、見る者を飽きさせない車両のパレードが関西ブルトレの特色でもありました。
一度は昭和の関西国鉄を見てみたかったですね・・・。
【画像提供】
タ様
【参考文献】
鉄道ピクトリアル No.763、791 (電気車研究会社 刊)
日本鉄道旅行地図帳⑨ 「関西2」 (新潮社 刊)
ウィキペディア (京都総合車両所、サンダーバード)