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Channel: Club SKRAM ~もはねの小部屋~
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嗚呼・・国鉄時代 (359)

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「偉大なる名車」 であると同時に 「偉大なる失敗作」 とも形容される581/583系 (以下、一括りに583系とします) 。優等列車の増発とともにそれらに使用する車両が増加、車両基地に収められないからという悲鳴がそもそもの (開発の) スタートラインだった583系は、とにかく車両基地に帰さず、昼も夜も休ませないで働かせようという、ブラック企業真っ青の国鉄当局の考え方が結実した車両になりますが、同じ昼夜兼用でももう少しホスピタリティを高く設定すれば、583系の評価も少しは違ったものになったんじゃないかと思います。でも、車両の広さは決まっています。あの当時 (昭和42年) はあの内容で十分な満足感が得られたのでしょう。今じゃ絶対にそっぽを向かれますけどね。

新幹線網が発達していない昭和40年代当時の国鉄は、とにかく 「質より量」 で、押し寄せる利用客をどうにか捌く手立てしか考える余裕はなく、寝台に関しては三段式を選択しました。各種媒体で 「従来の52センチから、中段が70センチ、下段は100センチとした」 と寝台幅の拡大について記述されているのを散見しますが、20系客車との比較なんでしょうか? で、もし、三段式でなく二段式にしたら? 昼行で使用する際の座席はリクライニング機構があったら? 新製当初から一等寝台 (→A寝台) を設定していたら? 耐寒耐雪装備をもっと強化していたら? きっと583系は20系を駆逐していたでしょう。でも、 「寝台車両は客車に限る」 という意見も根強かったんです。というのは、583系は電車ですから、クハネやサハネはともかく、モハネのモーター音が安眠を妨害することに繋がるからに他ならないからで、そのため、昼行専用の181系や481系よりも付随車の比率は高くしていたのだと推察します (581系が登場した昭和42年当時、481系が6M5Tで、581系が6M6T) 。
もっとも、583系の目的は20系を駆逐させるためではないので、ホスピタリティについては必要最小限に留めた意図が見え隠れしています。寝台幅が拡がっただけでもホスピタリティが格段に向上したと小躍りしていたのだから、やはり時代の差というか、年の差というか、とにかく考え方に隔世の感があるなと思いました。

「月光」「みどり」から始まって、 「つばめ」「はと」「明星」 「金星」 「はつかり」「はくつる」 「ゆうづる」「みちのく」きりしま」「有明」 「しらさぎ」 「ひばり」・・・と投入列車を増やしていき (赤字が昼行、青字が夜行。列車の順番は登場順ではないので悪しからず) 、485系とともに特急列車の増発に寄与しました。でも、昼行から夜行、夜行から昼行への切り替えの際に、そのセッティングが超面倒臭かったというのは有名な話で、寝台のセットと解体は全て人力で手動、それも限られた時間内に行わなければならないので、現場からはとにかく煙たがられた車両だったと聞きます。東北地方に投入された車両は冬季になれば雪害でリタイアが続出し、塒である青森運転所 (盛アオ~現在のJR東日本青森車両センター) の研修スタッフはそのトラブル対応に振り回されまくりました。そうこうしているうちに、新型の寝台客車である14系や24系が登場し、さらに初の二段寝台を採用した24系25形が登場すると、もはや583系の優位性は消え、昭和50年の山陽新幹線博多開業がとどめとなり、この段階で狭義としての 「583系終焉」 と捉える人も少なくありませんでした。50.3以降、 「なは」 「彗星」 「雷鳥」 「にちりん」 といった具合に、新たに使用列車が増えはしましたが、その一方で 「明星」 や 「ゆうづる」 「彗星」 など、客車と電車の両方を使用する列車は、ダイヤ改正の度に客車に置き換わるなど、昭和50年代は583系にとって明るい話題は少なかったように思います。

私も実際に583系は3回ほど乗りましたけど、あまり良い思い出がありません。三段寝台の中段はデブには地獄そのものでしたし、グリーン車に乗ればリクライニングがぶっ壊れていまして、空調の効きも良くなくて、 「583系は見るだけでいい」 という評価になりました。
ボンネット形とはまた違う優美さがあって愛好者の間では人気者でしたけど、利用者目線で見れば、とにかく窮屈。そして現場サイドから見れば特殊な車両であるが故に、その取り扱いが極めて面倒と、これほど賛否が二分した車両も珍しいのではないかと思います。

平成28年現在、線路上を走る583系は6両だけ。波動輸送に大活躍していますけど、末永い活躍を祈ります。

【画像提供】
岩堀春男先生
【参考文献・引用】
国鉄車輌誕生秘話 (ネコ・パブリッシング社 刊)
キャンブックス 「581・583系物語」 (JTBパブリッシング社 刊)

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